===ご自分が特別"文具好き"だと意識したのは、いつ頃のことですか。
(高畑)小学生の頃から理科や図工が好きで、いつも何かを作っていました。文具はどちらかというと、そのオマケみたいなものです、何かを作っているうちに道具や文具にもこだわるようになりました。
僕が小、中学生の頃、80年代後半から90年代初めにかけて、ある意味文房具の一番いい時期だったんではないでしょうか。チームデミ、ゲージパンチ、テプラ、ガチャックなど、それまでに無かった新しく楽しい文房具が次々と発表されました。テプラが出たことは雑誌で知り、近所の文具屋に取り寄せてもらいました。手に入れたときは嬉しくてその日のうちに1本目のテープが無くなったのを覚えています。その頃は、まだパソコンも満足のいく性能ではなく、融通が利かないので、手のほうが早くてきれいだと思ってました。
ちょうどその頃、ナツメ出版から「ビーツールマガジン」という文具専門の雑誌が出ていて、かなり影響を受けたのですが、その雑誌の読者コーナーによく掲載されていた富山さんという方の手描きのイラストと手書きの文章による文具評が面白く、まねして書き始めました。最初はペラの紙で、友達に配った程度だったのですが、気が付いたら10年にもなります。大学に入って95年に本を作りました。300冊ほど刷ったのですが、あれは大赤字でしたけど(笑)。
高校まで四国にいて、「物づくりを学ぶなら関東だ!」と思って千葉大学に入り、幕張メッセに入り浸り、ISOTでは自作の本を配り歩くヘンな学生でしたが、何年もやっていると覚えてくれる人も出てきたりして・・(笑)。
大学は機械科で、精密加工というのをやってたんですが、電子顕微鏡の中で物を削ってました。もうちょっと人が扱うモノに近いところをやりたくて、結局大学院を蹴って一年勉強しなおして意匠科(デザイン工学科)大学院へ移りました。それでようやく今年卒業しました。
===テレビチャンピオンの「文房具王」ということですが、どのような経緯で、チャンピオンになられたのですか?
(高畑)それより以前から文具のホームページを作ってまして、たまたま番組の製作会社が出場者を探しているときにそのHPに目が止まったようで、出演依頼がありました。HPって、スポーツや車などのページはほんとにものすごく多いんですが、文具のページって少ないですね。僕より詳しい人は間違いなくいっぱいいると思うんですけど、アクションを起こす人は少なくて、たまたま敵がいなかったんだと思っています。
===どんな番組なのですか?
(高畑)一昨年の1月に収録、4月に放映されました。3回戦で競うものです。1回戦は五反田のオフィスデポで、ゲストが持ってきた作品をパッと見せられてそこに使われた文具を走って取って来る競技です。この店は広くて商品が多く見えますが、実はアイテム数は少なく、特徴のあるものは比較的簡単に見つかるんです。
2回戦は二組に分かれてそれぞれ対抗戦でした。私の組は散らかったOLの机を3万円以内で仕事のできる机に変えるというもので、もう一組は、双子姉妹の机をきれいに使いやすくする戦いでした。
2回戦の敗者復活戦は消しゴムの消しカスからその消しゴムを当てるというものでした。
3回戦はカルト問題。使っている音を聞いてその文具を当てるとかパーツだけを見てその文房具を当てるとか、
出場者は、メーカー(サンスター文具)から一人、HPから僕。ニフティーの文具サイトの管理者とそこによく出入りしている人。文具の業界紙で仕事をしている人でした。本気でやるんだったら問屋さんとかが強いのかもしれないですけどそれじゃ面白くないんでしょうね。
テレビチャンピオンでもらった賞金50万円で、また自費出版本「究極の文房具カタログ」を2000部印刷できました。ISOTの隅で売らせてもらったりHPで売ったりしてます。
なんだかわらしべ長者みたいな状況で、ホームページから、テレビチャンピオンに出て、賞金で本出して、出場してたおじさんに誘われて、入社しちゃいました。今その人が私の上司です。
===一昨年のISOTで、ご自身で販売されていた"究極の文房具カタログ"について聞かせてください
(高畑)テレビチャンピオンの賞金を注ぎ込んで作った2000冊を販売してますが、もう残り200冊を切ったぐらいです。小さい頃から、もの作りや日常の道具として、いろんな文房具を実際に使ってみて、本当にいいと思うものを紹介しています。ですから自分の小遣いの範囲で買えるリーズナブルな文房具が中心で、万年筆などの高級文具は載ってないんですけどね。
移り気で三日坊主で、小ネタ好きなので、いろんなものをちょこちょこ作ります。そのたびに必要な道具が少しずつ増えていきますから、気が付いたら大体の事はできるぐらいに道具はそろってきました。三日坊主がいいかどうかはわかりませんが、年間120回三日坊主をすれば、いつもそれなりに充実してるんではないかと・・(笑)結局、そうやって遊ぶのが好きで、作ったものを他人に見せびらかしたりプレゼントしたりするのが好きで、それに使ってきたかわいい文具や道具たちもせっかくだから紹介したいという。そういう本です。ですからこの本の掲載基準は私が使って好きか嫌いかそれだけです。使ってみていいと思えるものなら何でも載せます。それはコメントを読んでいただければどこがどういいと思っているのかはわかってもらえると思います。僕はメーカーの人間になってしまいましたが、この本や、自分のホームページの中では差別しないつもりです。いつか私の本や、ホームページに載ることがミシュランみたいに文具のステイタスになるくらいにならないかなあなどと考えたりしてます。
===高畑さんはこのインタビューの最中にも、紙切りとかを披露してくれて、出来映えにびっくりしているのですが、話芸のほうもお達者で、これで商売になるんじゃないですか(笑)
(高畑)「秋葉原のラジオデパート前で実演販売でもすれば?」といわれたりすることはありますね。昨年のISOTでは、メーカーとして実演をやってましたが、時々会社と関係なく小売店さんに頼まれて休日に実演販売をやったりということもあります。いい文具なのに知られていないものって、ほんとに多いんです。そういうものは、使い方を教えてあげると売れます。カールのゲージパンチが日に20本とか売れたりするんです。
ゲージパンチの場合、「穴が30個あきます」ではダメです。たとえば雑誌の切抜きを取っておく人に、「クリアファイルは重くて厚くて値段も高いでしょ。でも2つ穴はすぐにちぎれますよね。これなら薄くて軽いし、丈夫です。これで十分でしょう。」と言いながら破いた雑誌にカチャカチャと穴を開けてセットし、引っ張って見せます。ここで初めて表情が変わる人が意外に多い。ただの両面テープだって、「レシートの整理って困るでしょ。たとえばね。」と言いながらノートに幅広の両面テープを縦にビィーッと貼り付け、青色の横線のところにカッターで切込みを入れます。下から順番に一枚剥がしてレシートを貼り、また一枚はがしてレシートを貼ります。すると昔からあるテレフォンリストみたいな状態になります。「とりあえず貼っておくならべたつかないし簡単でしょ。」と言うと売れたりします。使い方という付加価値付きで売ります。タテヨコホッチキスなんて、もうずいぶん前からの商品なのに、説明すると「新製品ですか?」って聞かれます。
実演販売を経験してみて思うのは、ひとつは、こっちが考えてるほど文具は知られていないということ。もうひとつは、お客さんが実際に使っているところをイメージできないものは、なかなか売れないということでしょうか、メーカーがいろんな便利な機能を開発しても、それがお客さんまで届いていない気がします。トンボの蛍コートとか、ペン先にカバーが付いていますが、そういう商品があることすら知られていない。フラットクリンチホッチキスですら、一般の認知度は驚くほど低いのが現状です。そうすると、「このホッチキスは隣のより値段が高い」としか評価されなかったりしています。また、機能を理解したとしても、自分の生活や仕事のなかで、どう便利なのか、どう使えるのかと言ったことを想像できる人は意外に少なく、できるだけ具体的なイメージを見せてあげないといけないんです。「レシートを」とか「雑誌の切抜きを」とかね。そういう見せ方が大事なんじゃないかと・・・
===純粋にユーザーの立場だったのが、今、メーカーの位置にいらっしゃるわけですが、改めて文房具の魅力については、どのように感じていらっしゃいますか?
(高畑)僕自身あんまり大きいものより、じぶんの手の届く範囲のものに興味があって、そういう意味でも文房具はちょうどいいと思っています。文具にかかわるいろんな表現活動をしてきましたが、自分の中ではその一環として考えています。ですから、たとえばデザインだけにこだわるとかではなく、パッケージも、売り方も、店頭も、使い勝手も、トータルで何か面白いことができればいいなあとは思っています。ただ、実際に関わってみると、ユーザーのときには考えもしなかった難しい問題がいっぱいあって、日々勉強をしているところです。
文房具を手にして触っていると、設計者の考えや思想や、思い入れのようなものがわかってくる時があります。僕は機械科の出身でもあるので、「こうできなかったからこうなった」とか、「ここはすごくうまく設計されている」とか、「外見は同じなのに、金型が改良されてるとか、このパッケージはかなり難しいとか、・・・いろんなものが見えてきます。そうすると、「作っている人、頑張ってるんだなぁ〜」なんて勝手に思い、嬉しくなります。そういうことを使う人にも知ってほしいと思ったりします。
僕はこういう本を作ったりHP開いたりしているので、いろんな事を聞かれます。「使っているうちにボールペンの玉が取れてしまう」とか「書けなくなる」と言う人には、こういう計算をして見せることがあります。「今ここにあるボールペンのボールの直径は約0.5mm。机の上に30センチの定規を置いて0.5秒で端から端まで線を引きます。それほど難しいことをしたように見えないでしょ。でもこのときの回転数は300/(0.5×0.5×3.14)×60=約23000回転/分。フォーミュラーカーのエンジンだってこんな回転数にはなりません。特に筆圧の強い方の場合、たとえば500gwの加重をかけたとすると、玉が受ける圧力は1平方メートルあたりに換算すると600トン以上。局所的な摩擦や発熱も相当のものになるはずです。たった百円のボールペンの小さなペン先が、ある意味では車やバイクの部品以上に過酷な状態にさらされているんです。ちょっとは大目に見てやる気にもなりませんか?」と言うとたいてい納得してもらえます(笑)。
「子供の手は切れないで、紙はよく切れるはさみはありませんか?」とお母さんに聞かれることがありますが、「残念ながら手が切れないハサミで、すばらしく切れるはさみはありません。もし、上手にはさみを使うようになってほしいなら、よく切れるはさみをオススメします。失敗すれば手を切ることもあるかもしれませんが、ちゃんとした使い方を教えてあげてください。よく切れるハサミは、人を傷つけることもありますが、すばらしいものを創り出すことができる道具だということを教えてあげてください。自分の手を切った痛みを知っている人は人に刃物を向けるようなことは無いと思います。」そういいながらいくつか作品を作って見せ、後はお客さんに決めてもらいます。でも、そういうことは、使う人にもわかってもらわないと、いい文房具がどんどん死んでいっているような気がするんです。
===これまでに出会った、お気に入りの文房具というのがあったら教えてください。
(高畑)お気に入りのハサミはダーレ社(ドイツ)のスーパーシザース50010と言うハサミ。抜群の切れ味で、切ることそのものが楽しくなります。革製品製作者に特注のカバーを作ってもらって大事に使っています。
いつも必ず持ち歩いているのはビクトリノックスのトラベラーといういわゆる十徳ナイフ。はさみがついててなにかと便利です。もう使い始めて15年以上になります。
ボールペンなら地味ですが間違いなくパイロットのV−CORNがピカイチ。これも十年以上前から愛用してます。信頼性が抜群に高く、通常の使用ならインクがなくなるまで滑らかに書けます。とっさにインクが出なくてイライラなんて皆無です。いまだにこれ以上の水性ボールペンに出会ったことが無い!
カールのゲージパンチもリニューアルされてずいぶん良くなりました。従来品の欠点や不満点をほぼすべて解消しています。前作を使っていた人は、おもわずニヤリとしてしまうような細かいところまでキッチリ改良されていて、リニューアルのお手本のような商品だと思います。
カッターならオルファのマガジンAL型が最近のベスト。手に取って感動しました。替え刃を6枚までまるでホチキスの針を装填するかのように簡単にセットでき、オートロックで誰にでも扱いやすい。だけどしっかりしたグリップ感と先端に固定ネジが付いていて、完全なプロ仕様。「こういうのがほしかったんや!!」と言いたくなる逸品です。
こういう使う人のことを考えて作られたきちっとした誠実な文房具が好きですね。それとは別にすごくバカバカしい文具や多機能文具みたいなものもかなり好きで実は集めてたりしますけど・・
===高畑さんは現在はメーカーにおられますが、ユーザーとして、また、店舗での実演販売の経験も加えて、多面的にご覧になって、文具店に対して"こうしたらどう?"というようなことはありませんか。
(高畑)文房具は単価が低く、多品種で、ひとつの製品に使える面積が限られているから、展示の仕方がすごく難しいとは思います。でもやはり展示の仕方や売り方に問題はあると思うんです。どのお店もほとんど同じに見えてしまう。雑貨やアパレルなどに比べていろんな意味で「見せかた」が遅れているんではないかと思います。
まず商品が探しにくくてわかりにくい。たとえば封筒ひとつ買うにしても、角型2号とか長型3号とかA4とかB5とか言って、ピンとくるひとは、ほとんどいません。コップが欠けたときに、どの接着剤を買えばいいのか、すぐに見つけられる人もまずいない。端から順番にパッケージを見ていくしかないですよね。
また、知られていない商品が知られないままです。たとえば先ほど話に出てきたゲージパンチ。私はパンチのコーナーだけにおいているのは間違いだと思っています。どうしてルーズリーフのコーナーに置かないんでしょう?ルーズリーフの穴を自分で開けられること自体ほとんどの人は知らないんですよ。
それから、自分が使っているところがイメージしにくい。さっきも言いましたけど、かなり具体的に自分が何に使うかをイメージできないとなかなか購入には至りません。
まずはそういうことをお客さんにわかりやすく伝えることが必要ではないかと思います。ものすごい数の文房具について、ちゃんと知っているお客さんなんてほとんどいません。店員さんでも把握しきれないほどの商品がある。「これこれこういう事に使うにはどれがいいの?」と聞かれても、店員さんも答えられなかったりします。だからといって店員さんに「頑張って商品知識をつけろ」とか「わかりやすいPOPを書け」と言っても無理でしょう。これにはおさえるべきコツがあって、方法論が必要になってくると思います。
あ、それから、もうひとつ、"更新"も効果的かもしれません。ホームページがリピーターを確保する一番効果的な方法は、"更新"です。行くと何かしら新しい発見があるというのも重要なことです。
東急ハンズは値引きをしないのに、あんなにたくさんの人が行きますよね。何かを探しているときには、とにかくあそこに行けばきっと手に入ると思うし、何かを作っていて行き詰まっているときには、あそこに行けばきっとヒントがある。とか、教えてもらえると思う。なんにも目的がないときでもあそこにいけばなにか面白いものがあるかもしれない。何か楽しいことがあるかもしれない。と思えます。あそこにはかなりいろんな「仕掛け」があります。あそこだからできるサービスもたくさんありますが、今ある店舗と什器と品揃えからはじめられる事だってたくさんあると思います。たとえばハンズがよくやる実物貼り付けディスプレイ。商品だけでなく、実際にそれを使用した作品や使用例まで実物が貼り付けてある。非常に具体的にイメージできるし、質感が伝わります。POPだけでなく持ち帰れるリーフレットも、あんなにしっかりしたものでなくたって、いいんです。さっき言った接着剤なんかの選び方から、熨斗袋の選び方、みんな実は知らないことだらけです。もっと積極的に提案が必要じゃないでしょうか?
文具屋さんがみんな通販になったらつまんないですよ。だから僕は小売店にすごく頑張ってほしいんです。ネットやカタログに対する小売店の最大の武器は、手触りとか、重さ、色合い、匂い、その空間の雰囲気。・・・そういったデータに変換しにくいものを伝えられることにあると思っています。これは小売店じゃなければダメなんですから、無くすべきではないんです。お客さんの方もネットだけではダメな部分があることを知っておかなくてはいけないと思います。
===どうしたら文具業界が活性化できるのか、若い高畑さんならではのお考えを、ぜひ聞かせてください。
(高畑)「こうすれば業界全体が活性化する」なんて方法は僕には考えもつきません。業界全体が難しい局面にあることは確かだと思います。ですが、僕には文具業界全体が縮小傾向にあるのに、どうもつまらない問題に足を引っ張られている気がします。ユーザーや役所に媚びる卑屈な姿勢は、結局自分の首をしめるのではないかと思います。いろんな意味で表面的な見せかけの「やさしさ」が私は好きではありません。エコマークやグリーン購入法なんかにしても、どう考えたっておかしい。再生材料の含有率が高い道具だけがイコール地球や環境にやさしいなんてウソです。短絡的な基準で自己満足しているようにしか思えない規制や権威に、反論もできずに言いなりになっている業界全体の姿勢が良くないと思います。確かにマークが一個付いているかいないかが売上を左右する重要な問題になりうることは明らかです。でもその基準が正しくないとしたら、みんなでより良くなるように話し合ったり抗議すべきじゃないでしょうか?
環境や地球といった、広く公共のものを大事にするには、短期的にはやっぱりみんなが少しずつ損をしないと成り立たないと思っています。でも、現状では、みんなそんなつもりはさらさら無い。使い古された表現ですが、私には"エコ"の陰に"エゴ"のほうが色濃く見えてしまいます。ユニバーサルデザインや"安全"な文具にしたって、多くのものはユーザーのことを本当に考えているかといえば疑問です。「僕ってこんなにやさしいでしょ!」なんてニコニコしながら寄ってくるやつにいいやつなんていたためしがありません。
それと、全体的に非常に保守的な印象を受けます。「以前からそうだから」という理由以外にそうしている理由が見つからないような部分があるのではないでしょうか。モノ自体が小さく安いですから、一つ一つは小さなことかもしれませんが、小さな改善をする余地はものすごくたくさんあるように思います。
(高畑)子供の頃、僕はオモチャ屋とか文房具屋に入り浸っている子供だったんです。店のおっちゃんにいろいろ教えてもらったりしましたね。
(金子)昔は冬は火鉢にコタツ、風呂をたくにも自分で薪割ったり・・・。今は寒くても暑くても、エアコンのリモコンスイッチ押すだけ。便利過ぎて、自分で作る工夫も必要ないでしょ。
(高畑)便利を否定はしません。でも、それだけですべてが成り立ってるわけではなく、他にも必要な部分はたくさんあると思います。
(金子)人間性の問題にまでなってしまう・・・・
(高畑)今、大学生でもちょっとした実験装置も作れなければ、レポートをきれいにまとめることすらできない人もかなりいたりして・・・経験値が足りないというか、教えられないとやり方の見当もつかないとか・・
(金子)近頃の小学校の先生、宿題の出し方もアバウトで、"何か作ってこい!"自由にさせるのはいいかもしれないけれど、何も示さずに自由にさせるっていうのも、子供がかわいそう。
(高畑)「詰め込みをやめれば独創性が生まれる」というのは大人の幻想です。モノを作るのに限らず、基本的に人間のすべての思考は、それまでに脳の中にあるものの組み合わせからしか生まれません。ひらめきは無からは生まれません。経験や知識のプールの大きさは非常に重要です。いろんな経験をし、いろんな事を学ぶ必要があります。だから、まだそのプールが小さい子供のうちから自由にしろというのは何もするなというのと大差ないと思っています。独創性のある人はまず間違いなくいろんな経験や知識の大きなプールを持っています。もちろんそれは教科書に書いてある知識だけでなく、体を動かしたり道具を使ったりする経験など、様々なことを含みます。それこそナイフを使うとかもね。
(金子)いつの間にか安全カミソリも店からなくなっています。
(高畑)最近は物騒ですから、管理側の理屈もわかりますよ。でも僕なんか一年中ポケットナイフを持って生活しているわけですよ。ナイフは人を刺すこともできるけれど、それよりもっとすばらしいものをたくさん作れる創造的な道具なんです。強い力を持つものほど人を不幸にも幸福にもする力を強く持っています。ケガをするかもしれませんが、その怖さを知った上で覚悟して使ってほしいと思います。これはむしろ学校より家庭の問題でしょうけど。
(金子)子供のときから、苦労しなきゃわかんないことってたくさんあるのに・・・
(高畑)僕も遊ぶのが好きだけど、ほんとに楽しいことがしたかったら努力が必要だということをわかってほしい。妥協しない楽しさを知ってしまうと、もう手抜きはできない。でもそういうことって、自分が体験するしかないから、僕には、自分がほんとに楽しくやっているところを見せるぐらいしかできないんじゃないかと思います。いろんな方法でそれをやりたいですね。
(金子)すぐには広がらないかもしれないけれど、積み重ねていかないとね。
(高畑)そうですね。そういう楽しさって、そう簡単に広がるものではないかもしれませんが、大切なことだし、楽しいことだと思うので、ちょっとづつでもわかってもらえる人が増えていけばいいなと思います。
掲載ページが多いため、一部画像を割愛させていただきました